口蹄疫からの再生

更新日:2021年03月09日

長友克裕さんの写真

氏名:有限会社ナガトモ代表取締役

長友克裕氏(木城町養豚農家)

 私は木城町で母豚1,200頭、常時子豚7,000頭規模の養豚繁殖経営を営んでいます。

 平成22年4月20日激震が走ります、口蹄疫の発生です。児湯郡内発生に驚きと、最悪の事態が脳裏を駆け巡りました。まずは冷静にならなければいけないと思い、情報収集に当たりました。川南町の生産者たちはパニック状態なのに、テレビでの赤松農林水産大臣の「弱毒性の口蹄疫で連休明けには落ち着く」との発表にものすごく不安を感じました。

 不安は的中、口蹄疫は広がり続け、ついには豚に感染してしまいました。その時は自分の農場はもちろん宮崎県全体にまで広がると危惧しました。その後、多くの川南町の生産者から連絡が入り「自分の農場は感染してしまったが、長友君は頑張って防いでね」と声をかけられた時には、涙がでたし、何とか感染を止めたいと思いました。

 そんな折にリングワクチンの話が出ました。他の地域に感染しないためにと自分は即決しましたが、町内の生産者には反対や不安の声も多く、電話での説得にあたりました。当時の役場担当職員は、生産者の説得に大変苦労したと思います。

 ワクチンが終わり殺処分の日、当時3才だった長男が、何かを感じとったのでしょう、農場に行く自分の足にしがみついて泣きじゃくった姿を、今でも忘れません。

 家畜29万7,808頭が犠牲になり、ようやく8月末に終息宣言がだされました。

 その間、宮崎県をはじめ全国の獣医師の方々には、日頃は命を助ける仕事に就かれているのに、口蹄疫の中では最前線に立たれ、他の地域の家畜を守る為とはいえ、理不尽な命の選択を余儀なくされた、大変過酷な状況でしたが、おかげで終息出来ました。心より感謝申し上げます。

 口蹄疫の発生により我々は多くの家畜を失いましたが、多くの事を学ばされ、同じ痛みを分かち合った仲間との絆は更に強くなりました。

 そして、再開、復興へ向けて若手養豚農家を中心とし、今は亡き野津手重人さんを筆頭に「新生養豚プロジェクト協議会」が立ち上がりました。

 この協議会により、養豚経営に深刻な打撃を与えるオーエスキー病(AD)、豚繁殖・呼吸障がい症候群(PRRS)の清浄地域を構築する事と、疾病情報の共有につながりました。
 平成23年11月1日より、全国の養豚関係者の協力のもと全国からAD、PRRSフリーの育成豚が優先的に児湯地域に導入され、県からはフリーの育成豚の導入に助成金をつけていただき、家畜保健衛生所指導のもと、着地検査、定期的な地域全体のモニタリングが行われ、生産者や行政等一丸となってAD、PRRS陰性地域の構築、再開を奮闘してきました。

 この取り組みの結果、事故率は減少し、発育も良く、薬品費も軽減され、生産者からの喜びの声を聞きます。

 今後は、口蹄疫の時に多くの方々から助けていただいた感謝を忘れずに、行政や家畜保健衛生所や各種団体と連携を密に、全国にも誇れる、地域に根ざした養豚業を目指していきたいと思います。

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宮崎県宮崎市橘通東2-10-1

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