第八次宮崎県農業・農村振興長期計画の農業経営モデル

更新日:2021年03月25日

1 農業経営モデルの意義・目的

第八次宮崎県農業・農村振興長期計画では、「持続可能な魅力あるみやざき農業」を実現するため様々な取組を展開することとしています。
このため、経営規模の大小を問わず、農業者がステップアップした姿として、宮崎の特徴的な営農方式で「農業経営モデル」を例示的に作成しました。
これらのモデルも参考に、「1,000万円以上稼げる農業者」を1,500経営体育成できるような、魅力ある農業を実現したいと考えています。

2 農業経営モデルの考え方(方向性)

農業経営モデルは、本県農業で特徴的な、「施設野菜」、「露地野菜」、「肉用牛」の3つの分野について、スマート農業等の導入による積極的な省力・効率化等を考慮した次の2つのモデルに区分し整理しました。

(1)スマート化モデル

スマート農業技術等の導入により、収量向上や省力化を図りながら規模を維持・拡大し、1,000万円前後の所得を目指すモデルです。

(2)法人化モデル

スマート農業の積極的な導入に加え、規模の拡大や法人化などを図り、4,000万円前後の所得を目指すモデルです。


3 農業経営モデル活用上の留意点

各モデルは、以下の前提条件のもと、先行的な取組事例等を参考に試算したものです。各地域・農業者においては、地域毎の経営指標として作物別に作成している「農業経営管理指針」も含めて、それぞれの経営環境に応じて活用されるようお願いします。

(1)ICTやAI、ロボット等、スマート農業導入による生産性向上を見込む。
(2)販売価格や経費等は現状(令和2年)の価格を基準。
(3)施設・機械等の整備・導入は、補助事業やリース等の活用を見込む。

4 品目・畜種別経営モデル

(1)施設野菜
1) スマート化モデル
営農類型 促成きゅうり専作(30a) 対象地域 県全域

モデルの

ポイント

ICTを活用した複合環境制御技術や自動かん水装置等の導入によるきゅうりつる下げ栽培により、高収量と省力化を実現する施設野菜経営
技術・取組の概要
  • 促成きゅうり専作の家族経営による高反収栽培。
  • ICTを活用した複合環境制御により、理想的な温度管理と労働時間の削減。
  • 厳寒期の局所CO2施用により、光合成能力を向上させ、収量を安定。
  • 細霧冷房や遮光を利用した高温対策により収量を向上。
  • 自動かん水による労働力削減と養液土耕栽培により草勢を安定。
  • つる下げ栽培による高い秀品性と共同選果により品質を統一。
経営収支 粗収益:3,300万円、経営費:2,370万円、農業所得:930万円
経営の姿 生産性向上等に関する指標
〇経営形態

家族経営

主たる従事者2名、臨時雇用3名

 

〇経営規模

30a(APハウス2号改良型30a)

〇労働時間

(施設の自動制御導入による労働時間減)

・自動かん水 98hr → 62hr

・複合環境制御 144hr → 103hr

〇主なコスト

・雇人費 120万円 → 260万円

・動力光熱費 200万円 → 210万円

・減価償却費 182万円 → 300万円

〇品質・収量

・品質秀品率90%以上

・収量(R元年産平均19.0t)35t/10a

【主な整備施設・機械】
〇スマート農業導入経費

・複合環境制御装置(一式) 170万円

・細霧冷房装置(一式) 320万円

・自動かん水装置(一式) 200万円

・CO2発生装置(3台) 240万円

【参考】

〇主たる従事者の所得(/人) 470万円  

〇主たる従事者の労働時間(/人) 1,636hr

 

2)法人化モデル
営農類型 促成ピーマン専作(3ha) 対象地域 県全域

モデルの

ポイント

既存ハウスに高軒高ハウスを増設し、規模を拡大しながらICTを活用した複合環境制御技術を導入することで、高収量を実現する施設野菜経営
技術・取組の概要
  • 促成ピーマン専作の雇用型経営による高反収栽培。
  • 高軒高施設により太陽光を最大限に利用しながら、土壌消毒を必要としない有機質培地での養液栽培により栽培期間を延長。
  • ICTを利用した複合環境制御により理想的な温度管理による増収と病害の発生を軽減。
  • 厳寒期の局所CO2施用により、光合成能力を向上させ、収量を安定。
  • 細霧冷房や自動遮光を利用した高温対策による収量の向上。
  • クリーンな作業環境を整備し、雇用労働力の安定確保。
  • 日本一の生産面積を誇る宮崎県のピーマンの優位性を生かした共同販売。
経営収支 粗収益:27,020万円、経営費:22,250万円、農業所得:4,770万円
経営の姿 生産性向上等に関する指標
〇経営形態

雇用型経営

主たる従事者4名、臨時雇用26名

 

〇経営規模

3ha

中期展張ハウス2ha、高軒高ハウス1ha

〇労働時間

・高軒高施設への複合環境制御装置の導入による温度管理

168hr/1ha → 112hr/1ha

〇主なコスト

・雇人費 3,120万円

・動力光熱費 4,510万円

・減価償却費 3,600万円

〇品質・収量

・品質秀品率90%以上

・収量(R元年産平均11.2t)

中期展張18t/10a、高軒高25t/10a

【主な整備施設・機械】
〇高軒高ハウス導入経費

・硬質フィルムハウス(一式) 24,350万円

・複合環境制御装置(一式) 1,750万円

・高所作業レール台車(一式) 1,820万円

・培地(一式) 700万円

・自走式防除(一式) 470万円

【参考】

〇主たる従事者の所得(/人) 1,193万円

〇主たる従事者の労働時間(/人) 1,544hr

 

 

(2)露地野菜
1) スマート化モデル
営農類型

露地野菜専業型(14ha)

(ほうれんそう、だいこん、かんしょ、らっきょう)

対象地域

県中南部地域

県西部地域

モデルの

ポイント

宮崎の主要露地野菜を中心とした輪作体系の中で、収穫作業の一部を作業委託しながら、規模を拡大する露地野菜経営
技術・取組の概要
  • 春夏作としてかんしょ、秋冬作としてほうれんそう、だいこん、他の作物との収穫時期が競合しないらっきょうを取り入れる輪作体系。
  • 手作業で行っていたほうれんそうの収穫を外部委託(機械収穫)し、雇用労力の削減及び規模を拡大。
  • 加工・業務用野菜の契約取引により収入を安定確保。
  • かんがい施設の整備された畑地や、排水対策を行った水田を利用。
  • 畑地だけでなく水田転作も利用した土地利用により連作障害を回避。
経営収支 粗収益:2,580万円、経営費:1,490万円、農業所得: 1,090万円
経営の姿 生産性向上等に関する指標
〇経営形態

雇用型経営体

主たる従事者2名

臨時雇用 平均3.8名・農繁期6名

 

〇経営規模

延べ作付面積     12ha → 14ha※実面積8.0ha

・ほうれんそう(加工) 5.0ha

・だいこん(秋まき契約) 1.5ha

・かんしょ(原料) 7.0ha

・らっきょう 0.5ha

〇労働時間

・ほうれんそう機械収穫の作業委託による労働時間減 113hr/10a → 61hr/10a

〇主なコスト

・雇人費 390万円 → 360万円

・作業委託料 0円 → 70万円

・減価償却費 160万円 → 160万円

〇品質・収量(10aあたり)

・ほうれんそう 2,800kg

・だいこん 5,000kg

・かんしょ 2,800kg

・らっきょう 2,200kg

【主な整備施設・機械】

・だいこん収穫機(1台) 120万円

・かんしょ収穫機(1台) 480万円

・自動かん水装置(一式) 200万円

・CO2発生装置(3台) 240万円

【参考】

〇主たる従事者の所得(/人) 540万円

〇主たる従事者の労働時間(/人) 1,789hr

 

2) 法人化モデル
営農類型

露地野菜専業型(140ha)
(ほうれんそう、かんしょ、ごぼう、にんじん)

対象地域

県中南部地域

県西部地域

モデルの

ポイント

宮崎の主要露地野菜を中心とした複数品目の輪作体系で、土地を高度利用しながら、スマート農業技術を導入することで省力化を実現し、規模拡大を実現する大規模露地野菜経営
技術・取組の概要
  • 春夏作としてごぼうやかんしょ、秋冬作としてにんじんやほうれんそうを栽培する輪作体系。
  • ロボットトラクター等の作業効率の良い機械の導入により、雇用労力を大幅に削減。
  • 加工・業務用野菜の契約取引により収入を安定確保。
  • かんがい施設の整備された畑地や、排水対策を行った水田を利用。
  • 畑地だけでなく水田転作も利用した土地利用により連作障害を回避。
経営収支 28,020万円、経営費:23,470万円、農業所得:4,550万円
経営の姿 生産性向上等に関する指標
〇経営形態

雇用型経営体

主たる従事者2名、常時雇用12名

臨時雇用 平均29名・農繁期49名

 

〇経営規模

延べ作付面積 12ha → 14ha ※実面積8.0ha

・ほうれんそう(加工) 5.0ha

・だいこん(秋まき契約) 1.5ha

・かんしょ(原料) 7.0ha

・らっきょう 0.5ha

〇労働時間

・ほうれんそう機械収穫の作業委託による労働時間減 113hr/10a → 61hr/10a

〇主なコスト

・雇人費 390万円 → 360万円

・作業委託料 0円 → 70万円

・減価償却費 160万円 → 160万円

〇品質・収量(10aあたり)

・ほうれんそう 2,800kg

・だいこん 5,000kg

・かんしょ 2,800kg

・らっきょう 2,200kg

【主な整備施設・機械】

・だいこん収穫機(1台) 120万円

・かんしょ収穫機(1台) 480万円

・自動かん水装置(一式) 200万円

・CO2発生装置(3台) 240万円

【参考】

〇主たる従事者の所得(/人) 540万円

〇主たる従事者の労働時間(/人) 1,789hr

 

 

(3)肉用牛
1) スマート化モデル
営農類型 肉用牛繁殖専業(自給飼料型)(85頭) 対象地域 県全域

モデルの

ポイント

キャトルセンター等の生産支援組織の活用や発情発見装置等のスマート農 業技術の導入により省力化と生産性の向上を図り、安定した所得を実現する肉用牛繁殖経営
技術・取組の概要
  • 自給飼料生産の一部の作業は、コントラクター等を活用し、自給飼料生産労力を削減。余剰労力を飼養管理に向けることにより、生産性を向上。
  • 発情発見装置、分娩監視装置等のIoT機器を導入し、高い生産性を実現。
  • 離乳後の去勢子牛はキャトルセンターに預け、子牛飼養管理労力を削減するとともに、空いた育成牛舎を利用し、繁殖牛を5頭増頭。
経営収支 粗収益:5,390万円、経営費:4,040万円、農業所得:1,350万円
経営の姿 生産性向上等に関する指標
〇経営形態

家族経営(主たる従事者2人)

 

〇経営規模

繁殖牛頭数 80頭→ 85頭

※右欄の生産性向上等に関する指標値は、80頭規模の経営から、上記取り組みにより85頭規模の経営になった場合を比較。

〇労働時間

・繁殖牛1頭当たり 61hr → 43hr

〇主なコスト

・購入飼料費 920万円 → 730万円

・減価償却費 1,480万円 → 1,560万円

・キャトルセンター及びコントラクター
利用料 0万円 → 470万円

〇品質・収量

・出荷頭数 75頭 → 83頭

【主な整備施設・機械】

〇導入年に必要な経費

・発情発見装置(20台) 140万円

・分娩監視装置(7台) 100万円

【参考】

〇主たる従事者の所得(/人)  670万円

〇主たる従事者の労働時間(/人) 1,834hr

 

2) 法人化モデル
営農類型 肉用牛一貫経営(繁殖300頭・肥育500頭) 対象地域 県全域

モデルの

ポイント

TMRセンターの活用やスマート農業技術の導入により、省力化と生産性向上を実現する大規模肉用牛一貫経営
技術・取組の概要
  • 繁殖部門の母牛飼料はTMRセンターからの供給により、自給飼料生産労力を削減し、余剰労力を飼養管理に向けることにより、生産性を向上。
  • 哺乳ロボット、発情発見装置、分娩監視装置、自動給餌機等のスマート農業技術を導入し、自動化による省力化と生産性の向上を実現。
経営収支 47,430万円、経営費:42,620万円、農業所得:4,810万円
経営の姿 生産性向上等に関する指標
〇経営形態

雇用型経営体

主たる従事者3人、正規雇用5人

 

〇経営規模

繁殖牛300頭、肥育牛500頭

※右欄の生産性向上等に関する指標値は、TMRセンターやスマート農業技術を活用しない同規模経営と比較したもの

〇労働時間

・繁殖部門   64.0hr/頭→32.0hr/頭
・肥育部門    15.4hr/頭→11.5hr/頭
 

〇主なコスト

・雇人費 2,100万円

・減価償却費 6,200万円

・購入飼料費 19,000万円

〇品質・収量

・雌子牛出荷頭数 119頭

・平均枝肉重量 520kg

【主な整備施設・機械】

〇スマート農業技術導入に係る整備費用

・哺乳ロボット(3台) 830万円

・発情監視装置(75台) 540万円

・分娩監視装置(25台) 330万円

・自動給餌機 ( 2式) 1,490万円

・CO2発生装置(3台) 240万円

【参考】

〇主たる従事者の所得(/人) 1,600万円
〇主たる従事者の労働時間(/人)

・繁殖部門 1,898hr
・肥育部門 1,898hr

この記事に関するお問い合わせ先

農政企画課
〒880-8501
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電話番号:0985-26-7426
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