第六次宮崎県水産業・漁村振興長期計画について

更新日:2021年05月31日

計画の内容

  • 計画策定にあたって
  • 計画の目標
  • 目指す将来像
  • 主要指標
  • 基本計画
  • 計画実現に向けた推進体制

計画策定にあたって

本県における水産業の振興に係る施策は、平成23年に「資源回復と経営力の強化による持続可能な水産業・漁村の構築」を基本目標とする「第五次宮崎県水産業・漁村振興長期計画」を策定し、水産資源の適切な利用管理や安定した漁業経営体づくりなどの施策展開により、儲かる水産業・漁村の構築を進めてきました。

そのような中、平成28年度には、水産業を取り巻く情勢変化に的確に対応するため、第五次長期計画を一部改訂した「第五次宮崎県水産業・漁村振興長期計画(後期計画)」を策定し、「未来へつなぐ漁業担い手プロジェクト」、「魅力ある水産業の構築プロジェクト」の重点プロジェクトを展開してきたところです。

これらの取組を通して、実践的な資源管理の実施によるアマダイ、カサゴ資源の回復、高収益型漁業への構造改革による経営体の収益向上、宮崎県漁業協同組合連合会の水産物の販売額や本県の水産物輸出額の増加など、一定の成果が現れているところです。

このように、目標の実現への着実な推進に取り組んでいるところでありますが、生産基盤である経営体・就業者の減少は継続しており、人口減少問題が深刻化する中、今後の減少も避けられない状況にあります。一方、世界的に水産物の需要が増大する中、新型コロナウイルス感染症の拡大により輸出の停滞がみられるものの、我が国の水産物の輸出は増加傾向にあり、水産業の更なる成長産業化への機運は高まってきています。

また、国においては、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就業構造を確立することを目指す「水産政策の改革」を平成30年に打ち出したところです。

このような水産業・漁村を取り巻く情勢の変化に対応し、本県水産業の更なる成長産業化を目指すため、今後の水産行政の基本方針となる新たな水産業・漁村振興長期計画を策定するものであります。

計画の目標

漁業経営体・就業者の減少が継続すると想定される中、水産業の成長産業化を実現するためには、以下の課題があります。

  1. 漁業経営体の減少を抑制するとともに、本県水産業の強みである高い生産力を更に向上していくなど、人口減少社会に対応した水産業の構築が必要です。
  2. その上で、水産物の世界的な需要増大を商機として輸出を強力に推進する等の対策とともに、漁業経営体の更なる収益向上が必要です。
  3. 一方で、水産政策の改革に伴う資源管理の高度化や国際的な資源管理及び世界的な環境保全の動向に対応し、水産資源の持続可能な利用管理を推進していく必要があります。
  4. さらには、水産業・漁村の生産基盤として重要な漁港の防災対策や漁協系統組織の機能強化を更に推進し、成長産業化を支える基盤の強化が必要です。

このような課題を克服するため、「ひなた魚ベーションで新たな波に乗り成長する水産業」の実現を基本目標とします。

ひなた魚ベーションで新たな波に乗り成長する水産業イメージ図

◆ひなた魚べーション

「ひなたイオベーション」とは、「イノベーション」と魚を意味する「いお」を組み合わせ、更に「ひなた(みやざきの)を加えたもので、「本県の水産業に関するイノベーション」を意味する造語です。

◆イノベーション

イノベーションとは、生産技術の革新のほか、新商品の開発、新市場・新資源の開拓、新しい経営組織の形成などを含む概念であり、社会に革新をもたらすような「新たな創造」全般のことを言います。

◆いお

魚のこと。「魚」の訓読みは「うお」、「さかな」ですが、西日本では「いお」と呼ぶ所があり(主に漁村)、「うお」の語源とも言われる古い呼び方になります。

目指す将来像

「ひなた魚ベーションで新たな波に乗り成長する水産業」の基本目標のもと、令和12年の本県の漁村では、漁業経営体の収益性向上により競争力のある法人経営体や多様性あふれる個人経営体が漁業・養殖業を担っており、地域の水産加工・流通業も共に成長し漁村経済が活性化しています。また、豊かな食文化といった地域の多様性も途絶えることなく提供され、国民や世界にとっても魅力的な水産業が躍動しています。

この魅力的な漁村・水産業には、多くの意欲のある新規就業者や多様な人材が参入して活躍し、漁業経営体の更なる成長に欠かせない担い手や労働力が充実しています。

また、水産資源の持続的な利用が高いレベルで実現されるとともに、成長を支える漁港や漁協系統組織の機能や基盤も充実したものとなっています。

このような成長のサイクルによって、将来の本県には「持続的に成長する水産業と多様性にあふれた魅力ある漁村」が活き活きと築かれています。

持続的に成長する水産業と多様性にあふれた魅力ある漁村イメージ図

主要指標

人口減少社会においても経営体の成長はもとより産業全体の成長を実現するために、「生産状況」、「経営体・就業者」、「成長」に関する数値目標を主要指標とします。

海面漁業・養殖業の生産額はここ数年330億円から370億円で推移していますが、漁業経営体が減少する中でも生産額を増やすため、新たな技術の活用等による生産環境づくりや漁船等の経営基盤の強化、情勢変化に対応した流通・販売の強化等によって生産性・収益性の向上を図り、経営体当たりの生産額を増加させるとともに、新規就業者や外国人材等の多様な人材の確保・育成体制の強化等を図り、経営体の減少を抑制することにより、令和12年には海面漁業・養殖業の生産額435億円を目指します。

主要指標イメージ図

基本計画     

1)人口減少社会に対応した生産環境の創出

(1)技術革新と漁場利用の最適なによる生産力強化

(2)多様な人材確保と生産・流通構造のスマート化

2)成長をつかむ高収益化と流通改革

(1)漁業経営体の構造改革と育成強化

(2)水産バリューチェーンの最適化

3)水産資源の最適な利用管理と環境保全への対応

(1)水産資源の利用管理の最適化

(2)環境に配慮した責任ある水産業の推進

4)成長産業化を支える漁村の基盤強化

(1)災害に強い漁村と安全対策の推進

(2)漁協と生産・流通の基盤強化

(3)漁村・内水面の多面的機能の発揮対策

漁業経営モデル

1)人口減少社会に対応した生産環境の創出

(1)技術革新と漁場利用の最適なによる生産力強化

1.生産力を加速するイノベーション

  • みやざき丸の機能強化による沖合・沿岸漁業の生産力強化や、漁海況情報の高度化によるまき網漁業等の生産力強化、大規模沖合養殖システムの導入等による養殖業の生産性向上などを推進します。

2.漁場利用の最適化

  • 浮魚礁の増設などの新たな漁場づくりや漁業許可の弾力的運用などに取り組みます。

大量に見尾く生産環境の”イオ”ベーションイメージ図

指標

現状値

目標値(R7)

漁海況情報のアクセス件数

37千件(H29-R1平均)

48千件

漁場整備による漁獲の増加量

11トン(R1)

400トン

 

(2)多様な人材確保と生産・流通構造のスマート化

1.多様な人材の確保・育成

  • 宮崎県漁村活性化推進機構や高等水産研修所を核とした、担い手や外国人等の多様な人材の確保・育成体制の構築などに取り組みます。

2.スマート化による生産・流通構造の改革

  • 操業の効率化や漁労作業の自動化等による海面漁業・養殖業のスマート化、ICT等を活用した市場機能のスマート化などを推進します。

多様な人材確保と生産・流通構造のスマート化イメージ図

指標

現状値(R1)

目標値(R7)

漁業研修の延べ受講者数(5年間)

32人

50人

新たな海況情報を活用する漁協

2漁協

12漁協

2)成長をつかむ高収益化と流通改革

(1)漁業経営体の構造改革と育成強化

1.高収益型漁業の促進

  • 漁船・漁具の機能強化や省力・低コスト機関の導入支援や、養殖業の協業化や加工・流通業者との連携強化の促進などにより、収益性の高い経営体づくりに取り組みます。

2.成長産業化を担う漁業経営体の育成強化

  • 漁業許可制度改革により、意欲ある漁業経営体の許可漁業の導入を促進するとともに、優良経営モデルの作成・提案・実証や指導を行うなど、漁業経営体の育成強化に取り組みます。

漁業経営体の構造改革と育成強化イメージ図

指標

現状値

目標値(R7)

経営基盤を強化する経営体(漁船リース)

46経営体(R1) 80経営体
法人経営体の生産額/主要経費(雇用・油) 100%(H28-H30平均) 110%

(2)水産バリューチェーンの最適化

1.水産業の成長を加速する輸出促進

  • 生産・加工・流通の連携強化や水産加工・流通施設のHACCP取得による海外マーケットに対応した輸出環境の整備を促進するとともに、本県水産物の海外でのブランド確立を推進します。

2.流通・販売の強化

  • 産地価格形成機能の向上、流通・販売の多角化、地域ブランドの育成による魚価向上、多様な水産物を活かしたおさかなビジネスによる付加価値向上の取組などを促進します。

水産バリューチェーンの最適化イメージ図

指標

現状値(H29-R1平均) 目標値(R7)
県漁連の販売・漁協の加工販売 31億円 40億円
海面漁業・養殖業の魚価向上率 100% 115%

3)水産資源の最適な利用管理と環境保全への対応

(1)水産資源の利用管理の最適化

1.広域回遊資源の適切な利用管理の推進

  • かつお・まぐろ漁業における国際的な資源管理への適切な対応や、水産政策の改革に伴う新たなTAC制度への適切な対応により、カツオ・マグロやイワシ・アジ・サバ等の適切な利用管理を推進します。

2.沿岸資源の利用管理の高度化

  • 本県独自の資源管理体制「みやざきモデル」の高度化を図るとともに、国や近隣県との連携による資源評価の高度化を図ることにより、沿岸資源の持続的利用を推進します。

3.内水面資源の回復と適切な管理

  • 国際的な資源管理が進むニホンウナギについて適切な利用管理を図るとともに、種苗放流、産卵床造成や石倉設置等による内水面資源の増殖活動を促進します。

水産資源の利用管理の最適化イメージ図

指標 現状値(R1) 目標値(R7)
主要沿岸魚種の資源量の増加率 100% 130%
漁協による内水面の増殖活動 32箇所 40箇所

(2)環境に配慮した責任ある水産業の推進

1.漁場環境保全の推進

  • 水産資源の生活史において重要な藻場・干潟の保全活動や養殖業の漁場改善計画に基づく適正な漁場管理などを推進します。

2.内水面の生態系保全の推進

  • 関係者の連携強化による「宮崎県内水面漁業活性化計画」の着実な推進や、カワウ等の鳥獣被害対策の強化などに取り組みます。

3.地球に優しい漁業の推進(SDGsの推進)

  • 漁業系廃棄物の計画的・集団的な処理や、漁業者による自主的な海洋ごみの回収を促進するとともに、省エネ機器の導入支援や省エネ操業を支援する漁海況情報の高度化に取り組みます。

環境に配慮した責任ある水産業の推進イメージ図

指標 現状値(R1) 目標値(R7)
藻場等の保全活動累積面積(H27~) 324ha 625ha
省エネ機器を導入する経営体 36経営体 60経営体

4)成長産業化を支える漁村の基盤強化

(1)災害に強い漁村と安全対策の推進

1.漁港の防災・減災対策の強化

  • 漁港施設や海岸保全施設の地震・津波対策に取り組みます。

2.操業の安全確保

  • 老朽化施設の定期的な更新を図るなど、油津漁業無線局の機能維持に取り組みます。

災害に強い漁村と安全対策の推進イメージ図

指標 現状値(R1) 目標値(R7)
地震・津波対策完了漁港 1漁港 6漁港

(2)漁協と生産・流通の基盤強化

1.漁業の成長を支える漁協の機能・基盤強化

  • 漁協系統組織の機能・基盤強化のアクションプランに基づく組織・運営体制の適正化と経済事業の合理化を促進するとともに、経営改善指導の強化などに取り組みます。

2.生産・流通基盤の強化による水産業の成長促進

  • かつお・まぐろ漁業やまき網の生産・流通の拠点化や、漁港の高度衛生管理対策等による機能強化などを推進します。

漁協と生産・流通の基盤強化イメージ図

指標 現状値(R1) 目標値(R7)
漁協合併の推進協議会等に参画する漁協 4漁協 20漁協
新たな生産流通基盤強化の施設 5施設

(3)漁村・内水面の多面的機能の発揮対策

1.漁村地域の機能保全

  • 漁港施設等の計画的な老朽化対策やプレジャーボート対策・放置艇対策を推進するとともに、漁村生活施設等の適切な保全に取り組みます。

2.魅力にあふれた漁村・内水面づくり

  • 地域主体の「漁村・内水面の多様な資源を活用し稼ぐ取組」を推進するとともに、各地域が策定した「浜の活力再生プラン」の取組を支援します。

漁村・内水面の多面的機能の発揮対策イメージ図

指標 現状値(R1) 目標値(R7)
老朽化対策済の漁港施設 48施設 66施設
浜プランによる漁村の漁業所得向上率 100% 110%

漁業経営モデル

(1)個人経営体の経営モデルの意義・目的

漁村の多様性を担う個人経営体(沿岸漁業が主体)は、漁業所得が県内の主要産業で雇用される労働者の平均給与よりも低く、経営体数も大きく減少しています。

このような中、第六次宮崎県水産業・漁村振興長期計画では、個人経営体の漁業所得(312万円)を令和12年度までに他産業の労働者と同水準(415万円)に向上させることを目標としています。

このため、この目標を実現するための個人経営体の具体的な姿について、「優良経営モデル」を例示するとともに、更なる高収入を目指す漁業者のための「高収益型経営モデル」や、その他のモデルとして「地域主体の漁業経営の多角化」の取組を例示します。

これらのモデルを参考に、基本計画に基づく施策の展開により他産業に見劣りしない稼げる個人経営体を育成し、豊かな食文化が維持され多様性にあふれた魅力ある漁村の実現を目指します。

(2)個人経営体の経営モデルの例示〈ステップ1 優良経営モデル〉

沿岸漁業における優良経営体は、一般的な経営体に比べ1日当たりの稼ぎや年間の操業日数が多く、所得率も高い傾向があります。また、複合漁業を営む優良経営体では、漁業権漁業である磯建網や知事許可漁業である刺網などを組み合わせた経営をしています。

ステップ1 優良経営モデル

(3)個人経営体の経営モデルの例示〈ステップ2 高収益型経営モデル〉

これまでに新たな漁船を導入するなどした個人経営体では、漁業所得が130%増加したケースもあります。このように、更なる高収益化を図るためには、漁船や機関、漁具などの経営基盤の強化が必要です。

ステップ2 高収益型経営モデル

(4)個人経営体の経営モデルの例示〈その他 地域主体の漁業経営の多角化〉

串間市東地区では、大型定置網の乗組員が個別の漁業や加工業を組み合わせた多角的な経営に取り組んでいます。

このように、地域で漁業所得向上を図るためには、例えば漁協が自営漁業を展開するなどの雇用型・共同型漁業(新規就業者も含む地域の漁業者が多角的な漁業経営の基盤として安定した所得を得る場となる漁業)を創出していくことも重要と考えられます。

その他 地域主体の漁業経営の多角化

計画実現に向けた推進体制

関係者の役割

施策の推進に当たっては、漁業者、県民、関係団体、関係業者、市町村、県が次の基本的な役割のもとで進めるものとします。

◆漁業者

「ひなた魚べーションで新たな波に乗り成長する水産業」の確立のための主役である漁業者は、計画実現の中心的役割を果たしましょう。

◆県民

本県水産業・漁村が有する安全・安心な水産物の供給や景観や漁村文化、海洋レジャーの場の提供等多面的機能への理解を深め、漁業者等の取組を応援しましょう。

遊漁者・遊漁船業者は、限られた資源を持続的に使っていかなければならない立場であることを理解し、資源管理や円滑な漁場利用等に積極的に協力しましょう。

◆漁協等関係団体

自らの機能強化に加えて、地域に根差した組織として、県や市町村、他産業等との連携を深めながら、担い手育成や産地づくり、農村地域の活性化など計画実現の地域調整役となることが期待されます。

◆関係業者(流通業者・加工業者)

水産関係者の一員として、計画実現に向けた漁業者等の取組を理解するとともに、連携を図りましょう。

◆市町村

地域の実情に精通した自治体として、地域の漁業者、漁協等と密接に連携し、地域の主体的な取組を支援するとともに、県と地域のパイプ役を果たします。

◆県

計画実現に向けた各種施策展開のマネージメントを行うとともに、市町村と連携し、漁業者、漁協等の主体的な取組を支援します。

この記事に関するお問い合わせ先

水産局 水産政策課
〒880-8501
宮崎県宮崎市橘通東2-10-1

1号館7階
電話番号:0985-26-7685
ファックス番号:0985-26-7309
メールフォームによるお問い合わせ