アマダイ類における資源回復に向けて
宮崎県ではアマダイ類について、2016年度に策定され2020年度に第二期へと移行した「宮崎海域アマダイ類の資源回復計画」に基づいて資源回復の取組を推進しています。今回は、現在のアマダイ類資源の状況や資源回復の取組として実施している種苗放流の現状について報告します。
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アマダイ類の資源回復に向けて(PDFファイル:715.8KB)
なお、この内容は水産宮崎No.767に掲載されたものです。
アマダイ類の資源回復に向けて
-資源部-
1 宮崎県のアマダイ類資源状況
本県のアマダイ類の漁獲量は、1989年の246トンをピークに漸減し、2011年には10トンを下回るまでに減少しましたが、2017年以降は15トンを超える水準に回復しており、直近の2022年の漁獲量は18.2トンとなっています。漁業種類別にみると9割程度が延縄漁業で、残り1割程度がその他の漁業による漁獲です(図1)。
図1 宮崎県のアマダイ類の漁獲量の推移
本県のアカアマダイの推定資源量は、1989年当時は400トン以上でしたが、その後徐々に減少し、2009年には60トン程度にまで減少しました(図2)。その後、2011年頃から回復傾向となり、2022年の資源量は150トン程度と推定され、2022年度資源評価では、資源状況は「中位・増加」と評価されるまでに回復しています。
第2期資源回復計画の中では、『回復計画を開始した2016年を基準年とし、資源量80トンから約35%増(107トン)にまで回復することで、漁獲量13トンを約80%増(23トン程度)とする』と明確な数値目標が掲げられていますが、2022年においては、前述のとおり推定資源量は目標値を超える水準に至っています。よって、資源は徐々に回復しつつある状況にあると考えられますが、今後も資源状況を正確に把握していくためには、しっかりと漁獲量等のデータを解析していくことが重要と考えています。
図2 アカアマダイの推定資源尾数と推定資源量の推移
2 アカアマダイの種苗放流
1ではアマダイ類の資源が回復傾向であることについて述べましたが、資源回復の一助とするために行っている取組の1つとして種苗放流の現状について述べます。
第二期資源回復計画の中では「アカアマダイ資源の積極的培養のため、アカアマダイの種苗放流の継続と放流効果の把握を行う」と掲げており、(一財)宮崎県水産振興協会で生産されたアカアマダイ種苗の放流を2015年以降ほぼ毎年実施しています。また、放流後の移動や成長、放流効果を明らかにするため、放流種苗の一部に腹びれ切除標識を行い、市場調査により標識魚を確認しています(表1)。
標識魚はこれまでに21尾が再捕され、最大魚は全長35.7cm、491.5gに成長していました(表2)。また、以前の報告では標識魚は放流場所の近隣の市場のみで確認されたとしていましたが、その後もモニタリングを継続して実施する中で、日南市地先で放流した種苗が川南市場で確認され、その個体は川南町地先で漁獲されたと推察されたため、ある程度の距離を移動することも分かりました(図3)。
表1 これまでの放流実績 表2 これまでの再捕実績
図3 標識魚の再捕位置
3 おわりに
アマダイ類は2022年現在、徐々に資源が回復しつつあると述べましたが、こうした回復傾向を維持しながら漁獲量も増やしていくことが資源を合理的に利用していく上で重要と考えられます。そのためには、漁業者が自主的に取り組んでいる取組(生き餌を使用しないことや休漁日の設定)の継続や、漁獲量の上限設定による資源管理措置、さらには種苗放流による資源の効率的な添加など、関係者が一丸となり、資源回復計画に沿った取組を着実に実行していくことが必要不可欠と考えています。
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更新日:2023年07月14日