日向灘のメヒカリの生態と資源動向の現状把握【資源部】
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水産宮崎No779_2024_06(PDFファイル:629.2KB)
なお,この内容は水産宮崎 No.779 2024年6月1日発行 (jf-net.ne.jp)に掲載されたものです。
はじめに
メヒカリは標準和名がアオメエソと呼ばれる魚で、居酒屋で唐揚げや南蛮漬けで提供されるなど、非常においしく、本県の特産品となっています。2022年における漁獲金額は8千3百万円と本県水産業や地域の食文化を支える重要な水産資源であり、令和5年度資源評価委員会においてメヒカリが評価対象種として選定され、資源評価を行ったのでご紹介いたします。
メヒカリの生態について
メヒカリの仔稚魚は東シナ海東部、薩南海域の黒潮流軸周辺で採取されています。北部海域ほど加入魚の浮遊期間が長く、加入した稚魚は成長とともに深場へ移動するようです。メヒカリの近縁種であるトモメヒカリは、本県沿岸では生殖腺重量指数(GSI)が平均1.3で成熟した個体が発見されていますが、メヒカリ(アオメエソ)は雌しか見つかっていないことに加え、GSIは平均0.3程度と低く、卵をもつような成熟魚が確認されていないため産卵場までの移動経路が不明であり、謎に包まれた魚です(図1、2)。
資源評価結果
2022年のメヒカリの漁獲量は256トンで、2016年以降は250~300トン以上に漁獲量が増加しています(図3)。
メヒカリは全てが深海えびびき網漁業で漁獲されることから、今回の資源評価では1978年以降の深海えびびき網漁業の漁獲努力量と漁獲量から単位努力量あたり漁獲量(CPUE)を算出し評価に用いました。資源レベルについては、2022年のCPUEが第3四分位を上回っていることから、高位にあると判断しました(図4)。また、資源動向については、直近5年間におけるCPUEの年変動率が2.14%のとなっていることから、横ばいと判断しました(図5)。(±5%未満は「横ばい」判断)
他県におけるメヒカリの漁獲量
愛知県における平成23年から令和2年の漁獲量は、300~500トンで安定的に推移しています(図6)。
茨城県の漁獲量は、平成28年に500トン程度に急増した後、200~300トン程度で推移しており、近年はCPUEも高位の水準にある模様です(図7)。上記の通り、メヒカリは我が国の太平洋側の漁獲量が多く、特に茨城県、愛知県では高い水準にあります。本県のメヒカリの資源レベルも他県同様に高位であることから、本県の漁獲量は他県に同調する可能性があると考えられます。
メヒカリのサイズ別漁獲量
小中サイズの漁獲量に対し大サイズの漁獲量は少なく、近年大サイズが減少し中サイズが増加しています(図8)。
おわりに
メヒカリの評価結果は資源レベルが高位、資源動向は横ばいでしたが、大サイズが減少していることに加え、メヒカリは生活史のなかで大規模な回遊をすることが知られていることから、本県沿岸域で再生産していない可能性もあり、他海域の漁獲量に同調することも考えられます。以上のことから、今後も他県における漁獲動向を注視する必要があると考えております。
水産資源は、食料供給面や社会経済面にとても有用な海洋生物であり、有限であるため持続的利用に向けた取り組みが重要であると考えております。今後もメヒカリのみならず、本県沿岸の重要資源について資源評価を継続し、水産資源の適切な管理及び合理的な利用に努めていく所存です。
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更新日:2024年07月02日