テンジクタチの収益性向上に係る成分含量等の季節推移の分析【経営流通部】
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水産宮崎No780_2024_07(PDFファイル:508.5KB)
なお,この内容は水産宮崎 No.780 2024年7月1日発行 (jf-net.ne.jp)に掲載されたものです。
はじめに
本県においてタチウオ類は資源状態が良好な魚種であり、なかでもテンジクタチ(図1)は南方系の魚で、近年漁獲が増加傾向にあると現場から声があがっています。2018年の調査では、タチウオ類のうち57%がタチウオで、43%がテンジクタチでしたが、ヒアリングによると県南ではさらにテンジクタチの漁獲割合が増えているとの声がありました。またテンジクタチはタチウオに比べ、一部の市場では魚価も高くなっています。そこで、テンジクタチのセールスポイントを把握し、魚価向上、収益性向上等に寄与することを目的として、タチウオとテンジクタチの体サイズ測定、破断強度、成分含量の季節変動を含めた分析を行い、比較しました。
体サイズ測定
県内で漁獲された、タチウオ及びテンジクタチを合計36尾測定しました。その結果、図2のとおりテンジクタチのほうが肥満度(CF:体重[g]-胃内容物重量[g]-生殖腺重量[g])/ 全長[cm]3×103 )が高いことがわかりました。またテンジクタチの肥満度の季節推移をみると、12月に最大となることがわかりました。
生殖腺指数(GSI:生殖腺重量[g] /(体重[g]-胃内容物重量[g])×102 )は両種共に6月に一番高い値を示しました。テンジクタチの季節変動は8月から12月にかけて下がり12月に最小になることがわかりました。
以上の結果から、テンジクタチは生殖腺指数が低く産卵に栄養を使う必要の無い12月に肥満度が上昇するので、魚肉の利用は12月が一番適していることが考えられました。
破断強度
破断強度とは繊維を破断させるために必要な荷重のことで、いわゆる魚肉の歯ごたえを表します。レオメーター(サン科学株式会社製,CR500DX)という計測機器を用いて、厚さ2cmの切り身を計測した結果、図3のとおりテンジクタチのほうがタチウオよりも破断強度が高いことがわかりました。季節推移は6月が一番低く、12月が一番高い結果となりました。つまり、テンジクタチは12月は身が締まり、歯ごたえのある食感を味わうことができます。
一般成分測定
一般成分とは食品の水分、たんぱく質、脂質、炭水化物及び灰分を指します。これらのうち水産物は炭水化物含量が少ないことから、炭水化物以外の4つの成分について、タチウオとテンジクタチの魚肉を測定しました。
図4のとおり、水分については10月以外の月でテンジクタチよりタチウオのほうが多く含まれていました。一番差の大きかった月は12月で7.24%の差がありました。脂質は、10月以外の月でタチウオよりテンジクタチのほうが多く含まれていました。タンパク質、灰分については、2種間の差は見られませんでした。
季節変動について、水分はテンジクタチにおいて6月から10月にかけて上がりますが、10月から12月の間に7.51%下がり、3月にかけても下がりました。一方,脂質はテンジクタチにおいて6月から10月にかけて下がりますが、10月から12月の間で7%上がり、3月にかけても上がっていました。タチウオでも水分,脂質で同様の傾向が見られますが、大きく差が出るのはテンジクタチでした。
このようなことから、テンジクタチは初夏から秋にかけて身が水っぽくなり、脂も落ちますが、秋から冬、初春にかけては脂が乗り、利用価値が上がることが示唆されました。
さいごに
今回は、タチウオ類をターゲットにして分析を行いましたが、今後も未利用魚や低利用魚、たくさん漁獲されている魚などの活用について、より有効に、より効果的に販売、利用できる方法の研究を行っていきます。
経営流通部では、漁業者や加工業者等の支援や、試験販売用の水産加工品の製造が可能な「水産物加工指導センター」を運営しています。もし水産業に従事される皆様で、加工や販売等の技術的な問題点や疑問等がありましたら、ご遠慮なくご相談いただきますようよろしくお願いいたします。
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更新日:2024年08月09日