宮崎県内初!海ぶどう陸上養殖と販路拡大に向けた取組【経営流通部】

更新日:2025年10月02日

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宮崎県内初!海ぶどう陸上養殖と販路拡大に向けた取組(PDFファイル:427.8KB)

なお、この内容は 水産宮崎No.794に掲載されたものです。

 

はじめに

  海ぶどうは、イワズタ科イワズタ属の海藻であり、正式名称は「クビレズタ」といいます。全国の海ぶどう陸上養殖の届出(令和7年)は165経営体であり、そのうち約8割が沖縄県です。また、令和5年度の全国陸上養殖の出荷量は藻類全体が約657トンであり、そのうち海ぶどうは約536トンと8割を占めています。

  宮崎県では、令和6年度から、省エネ・省コストで浜の女性等の就労の場(雇用需要不足の解消)となる新たな漁業を導入するため、漁業収益向上と漁村地域の活性化を目指して、海ぶどうの陸上養殖の支援を始めました。今回は、宮崎県内での海ぶどうの陸上養殖から販売について報告します。

 

海ぶどうの生育状況

  海ぶどうの養殖手法はネットに植付けし、水温26度前後で1日中光を当てて養殖を行います。1ヶ月という短期間で約3倍量に成長し、出荷可能になります。成長した海ぶどうは刈取り後、汚れを落とすために殺菌海水で3日間養生し、梱包・出荷を行います。

  宮崎県漁連が県内で初めて導入した海ぶどう陸上養殖は、右の図のような円柱型の水槽を利用しています。面積を取らないため、狭いコンテナハウスの中でも十分な量を生育することができます。また、人工海水を利用しており、水温、pHなどの調整も行っているため、水質を一定に保つことができます。天然海水と異なり、不純物が混ざることがないので清潔な状態です。

 

No794-図1

図1 養殖中の海ぶどう

 

宮崎県内における市場規模等事前調査

  これまで、県内で海ぶどう陸上養殖をしている養殖業者がいないため、店頭で海ぶどうを見かけることはあまりありませんでした。そのため、海ぶどうを県内で販売するにあたり、県内産の海ぶどうが生産された場合の販路先を調査するために、宮崎市内の大規模小売店舗に聞き取り調査を行いました。また、どのような形態、価格で販売されているかをオンライン販売サイトから調査しました。

 

No794-図2

図2 刈取り前の海ぶどう

聞き取り調査

  県内には大規模小売店舗が令和7年8月現在、227店舗あり、宮崎市内には57店舗あります。このうち県内資本を中心に店舗数の多い事業所を調査候補に選抜し、実際に、大規模小売店4事業所、小売店3事業所、業務用食品卸業社1社に対して、月間取扱量と方法、販売量と価格帯及びその他意見について聞き取り調査を行いました。

  事業所1ヶ月当たりの取扱量は3.6~25 kgであり、取扱合計量は48.15 kg/月(通常時23.15 kg/月、フェア期間25 kg/3日程度)でした。店頭での販売量は30~100 g、業務用卸売量は300 g、販売単価は5,000~11,000円/kgでした。今後取扱う場合、1パック当たり50~70 g、1,000円以内で販売したいとのことでした。また、県産品ということで、「宮崎の加工場で作ったオリジナルの海ぶどうのタレやへべすの風味を付けるなど、宮崎らしさがほしい」という意見もありました。

 

オンライン販売調査

  オンライン販売されている海ぶどう52種類の商品について「包装、商品形態」と「販売重量及び価格帯」の2点を比較しました。

  商品の形態は、そのまま生で食べられる状態のもの(以下「生タイプ」という)と濃塩水に漬けてある状態のもの(以下「濃塩水漬タイプ」という)と、大きく2種類に分かれていました。濃塩水漬タイプとは、販売時はしぼんでいるが、料理などに使用する前に水に数十秒間浸漬することで濃塩水が抜けて吸水し、元の状態に戻るタイプのことです。生タイプは小分けのフードパックに少量ずつ入っているものと発砲スチロールに業務用重量が入っている2種類があり、濃塩水漬タイプはパウチに入っているものとスタンドパックに入っている2種類がありました。

  販売重量は、100 g以下と1,000 g以上の2つに分かれていました。家庭向けのフードパックタイプは100 g、業務用の発砲スチロールタイプは1,000 g以上でした。また、濃塩水漬タイプは150 g以下のみであり、家庭向けでした。単価は4,000~6,000円/kgであり、平均単価は茎無し商品が5,446円、茎有り商品が5,163円と、茎無し商品の方が高い価格帯となりました。販売重量は生タイプの茎無しは500 gが2,000~4,000円で、濃塩水漬タイプの茎無しは100 g以下が1,000円以内で多く販売されていました。

 

No794-表1

表1 商品形態

 

おわりに

  宮崎県漁連では7月下旬から海ぶどうの出荷を開始し、県内のスーパーで「宮崎産海ぶどう」として販売されています。また、県内での生産ですので新鮮な状態で店頭に並ぶことが魅力です。サラダや刺身のトッピングなど、様々な料理に合わせられます。皆様、見かけることがありましたら、是非とも宮崎県内初の海ぶどうを手に取っていただき、ご賞味ください。

 

No794_図3

図3 販売されている海ぶどう(令和7年8月11日)

 

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