ドローンによる効率的な赤潮監視体制の構築【増養殖部】

更新日:2026年03月30日

1.はじめに

  本県の海面養殖では、ブリ類養殖やマダイ養殖が県北部、県南部で盛んに行われています。さらに近年では国の養殖成長産業化総合戦略やみどりの食料システム戦略に基づき、人工種苗の導入促進、大規模養殖システムの開発、輸出促進などの各種施策が進められ、養殖業のさらなる発展が期待されます。

  この海面養殖において、漁業被害を生み出す原因の一つが赤潮です。本県でも、令和6年7月末から8月にかけて発生した赤潮で漁業被害が発生し、被害額は過去最大の約9,400万円に達しました。近隣県でも依然として有毒赤潮が発生しており、注意が必要です。

  本稿では、本県の赤潮について説明した後、新たな赤潮監視体制の構築を目的に、令和7年度に導入したドローンの試験運用についてご紹介いたします。

2.本県の赤潮について

  これまでに本県では、平成28年から令和7年までの10年間でヘテロシグマ・アカシオとカレニア・ミキモトイの2種類のプランクトンによる赤潮被害が確認されており、この2種は宮崎県における主要な赤潮原因プランクトンといえます(図1)。県ではこの2種について注意密度と警戒密度を定めており、定期的なモニタリングを行うことで監視をしています(図2)。
  赤潮に対する対策として、近年赤潮防除剤が開発されたところではありますが、養殖魚を守り漁業被害を防ぐためには、早期に餌止めや生け簀の移動を行い、養殖魚を守ることが大切です。

 

No800_図1,2

図1  宮崎県の赤潮発生状況                                               図2  赤潮プランクトンの注意密度・警戒密度

3.新たな臨時赤潮体制の構築

  本県では、赤潮が発生した際は臨時赤潮調査を行い、漁協や漁業者へ情報提供を行ってきました。具体的には、船から赤潮が発生している範囲を目視で調査するともに、赤潮が発生しているところやあらかじめ設定している調査定点でサンプルを採取し、水温と溶存酸素量を測定します。定点を回り終えたら、サンプル海水1 mLの中にどのプランクトンが何個体いるのかを計数し、先述の注意レベル・警戒レベルを超えているのかを調べてファックス、メーリングリストで情報発信を行ってきました。船上からの目視調査のため海域全体を把握することが難しいことや、プランクトン数を計数後に情報発信を行うため、漁業者に情報が伝達できるまでに時間がかかるという課題がありました。
  そこで、より広範囲を見落としなく調査でき、かつ漁業者にわかりやすい情報発信ができないかと考えた結果、ドローンで海面を撮影し、その画像を発信することで解決できると考え、令和7年度に新たにドローンを導入しました。最高速度時速60 km、直線距離5 kmを飛行可能なほか、自動飛行や着水が可能です。最大の特徴は「マルチスペクトルカメラ」と「採水ユニット」を取り付け可能な点であり、撮影のほかに海水サンプルを30 mLほど回収することができます。これにより、船での調査に代替することが可能です(図3)。
  ここからは、新たな赤潮監視体制システムがどのようなものなのかを説明します。まず、ドローンを運用するにあたり、ドローンを操縦する操縦者とそれを補助する補助者の計2名以上での運用としました。複数人で周囲の状況を確認しながら運用することで、衝突等の事故を防ぐことが目的です。
  ドローンを用いた赤潮監視システムは、ドローン、基地局、アプリの運営サーバーの3つで構成します。このアプリとは、本県が運用し、漁業に関する県の情報を一元的に発信している「宮崎県漁業者支援システム操業支援アプリ」のことです。
  ドローンは、安全の関係上、現段階では半径1 km内を飛行することとしました。本県で赤潮が発生しやすい北浦湾内であれば、3カ所からの飛行でほぼ全域を調査することができる上、曇りの日でも調査を行うことができます。基地局は、ドパソコン、モニター、タブレット端末で構成されます。パソコンでは、ドローンの自動飛行ルートの作成や、バッテリー残量などのドローンの状況を確認することができます。ドローンの状況を確認することで、機体に異常が起きた際は即座に飛行を中断し、墜落などの事故を防ぎます。モニターではドローンの周辺映像を確認できます。ドローンの周辺を監視し、船の航行がある場合は操縦者と連携して激突を回避します。タブレット端末では撮影された画像を閲覧・選択し県の情報を一元的に発信している「操業技術支援アプリ」を運営しているサーバー(以下「サーバー」という)へ転送することができます。あらかじめサーバーと紐付けているため、迅速に調査結果を公表することができます。
  次に、調査の流れを説明します。まず、ドローンで海面を撮影します。ドローンが帰還したら撮影された画像を確認し、赤潮による海面着色の画像を選別します。選別したデータは、サーバーに転送し、ドローンの飛行経路と合わせて画像を公開します。これにより、どこで赤潮が発生しているかを漁業者が一目で分かるよう情報発信ができます(図4、5)。また、この間にマルチスペクトルカメラを採水ユニットに取り替え、赤潮が発生している場所で採水を行います。赤潮サンプルをピンポイントで採取できるため、効率化が図れるほか、従来は赤潮プランクトン数を計数後に行っていたところを、ドローンの飛行後に行えることで試算上では3時間ほど早く情報発信が可能となります。
  赤潮から養殖魚を守るためには、どれだけ早い段階で餌止め・生け簀の移動等を行い、養殖魚を守れるかが肝心です。今回の構想で、漁業者が赤潮への対策を行うよりよい判断材料となり、漁業被害が抑えられることを期待します。

 

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図3  令和7年度導入ドローン

 

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図4  ドローンによる赤潮監視体制のイメージ図

 

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図5  情報発信のイメージ

 

 

 

なお,この内容は 水産宮崎No.800に掲載されたものです。

電子ファイルは以下からダウンロードできます。

水産宮崎No800_2026_03(PDFファイル:878.7KB)

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