【水産試験場・資源部】沿岸資源の変動及び放流効果に影響を与える要因の解明

更新日:2026年07月01日

はじめに

  近年、本県の多くの沿岸魚種については、資源が減少傾向にあると評価されています。本県の重要な魚種に位置づけられているヒラメについても同様に減少傾向が続いており、毎年30万尾から40万尾を放流していますが、近年の回収率は約1%程度と低い値になっています。ヒラメの放流効果減少要因については、餓死や外敵による被食、逸散などによる減耗が考えられ、それらのうち、餓死や被食による初期減耗について検討することを目的として、令和7年度よりヒラメの放流効果調査を開始しました。

  今回は、令和7年度に実施した調査内容及び結果についてご紹介します。

1 餌料環境調査

1)肥満度及び空胃率の比較

  宮崎県沿岸で漁獲されたヒラメを調査し、全長、体重、生殖腺重量などの生体データを収集しました。

  得られた生体データから肥満度及び空胃率を算出し、過去データとの比較を行った結果、肥満度は0~1歳魚、2~4歳魚、5~8歳魚のいずれにおいても上昇傾向が見られ、特に5歳以上の高齢魚でよりその傾向が見られました(図1)。空胃率においても10年前と比べて改善傾向が見られ(表1)、栄養状態に関しては良くなっている可能性が示唆されました。

 

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図1 ヒラメ年齢別肥満度

 

No803_表1

表1 ヒラメ空胃率

 

2)安定同位体比分析

  1)のサンプルを使用し、東北大学にて炭素及び窒素の安定同位体比分析を行いました。

  放流後の安定同位体比の変化によって栄養状態の推定が行えることが知られており、放流前の種苗(以下「種苗」という)、放流後1年以内に再捕獲した個体(以下「再捕獲個体」という)、放流後1年以上経過した放流魚を含む自然界の個体(以下「野生個体」という)を分析することで、摂餌状況の把握を試みました。

  その結果、種苗の炭素および窒素安定同位体比の値は、野生個体とは明確に異なる値を示しており、再捕獲個体は野生個体の値へと近づいていく様子が見られました。このことから、放流した種苗は放流の数か月後には野生個体と同様に、天然の食物を摂食している可能性が示されました。

 

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図2 ヒラメ安定同位体比分析結果

 

3)餌料生物生息調査

  自家製作した小型ソリ式網(図3)を使用し、アミ類等のヒラメ餌料生物調査を行いました。

  船上から投下し砂地を曳くことで、底生の小型生物を捕獲し、生物種毎に分類した結果、類型別にはアミ類、長尾類、端脚類、等脚類、クーマ目類、魚類、口脚類、多毛類、頭足類、腹足類、刺胞動物、棘皮動物、線形動物の各種生物群が採捕されました(表2)。今後も継続して調査を実施し、時期等で比較することで、生息密度のピーク時期などを探っていきます。

 

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図3 小型ソリ式網

 

No803_表2

表2 餌料生物生息調査結果

 

2 被食調査

1)釣獲調査

  放流用のヒラメ種苗を使用し、昼間及び夜間に釣獲調査を行いました。

  放流箇所近辺の砂地にて計5回の調査を行った結果、釣獲されたのは小型のオキエソ(約14 cm)1尾のみでした。

  このことから、一見被食圧は低いようにも考えられましたが、調査日数が限られていることや潮汐による魚の食い気等への影響が考えられることから、結論づけるには至りませんでした。また、放流地点から離れた岩礁地帯ではカサゴやハタ類等が釣獲されましたが、放流直後の環境とは異なるため、影響は低いと考えられます。

 

No803_表3

表3 釣獲調査結果

 

2)捕食魚胃内容物調査

  ヒラメを捕食していると思われる魚種(令和7年度はオオニベ、カサゴ、オオモンハタ、スズキを選定)を漁業者の漁獲物からサンプリングし、胃内容物を調査しました。

  魚種毎に3~10サンプルの胃粘液をプールし、DNA分析を行った結果、全てのサンプルにおいてヒラメDNAは検出されなかったことから、被食圧は低い可能性が示されました(表4)。ただし、7月以降のサンプリングとなるため、捕食されにくいサイズに成長していた可能性も考えられます。今後は、放流直後のヒラメ種苗が被食されているかを把握するため、放流日や放流場所を考慮したサンプリングを行う必要があると考えています。

 

No803_表4_1
No803_表4_2

表4 胃内容物DNA分析結果

 

今後について

  今後は調査を継続することでデータを蓄積し、分析の精度を高めるとともに、ヒラメ放流効果減少要因について検討していきます。

この記事の電子ファイルは以下からダウンロードできます。

沿岸資源の変動及び放流効果に影響を与える要因の解明(PDFファイル:748.9KB)

なお,この内容は 水産宮崎No.803に掲載されたものです。

 

 

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