海ぶどう陸上養殖による新たな養殖モデルの作成【経営流通部】

更新日:2026年08月20日

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水産宮崎No804_2026_07(PDFファイル:389.4KB)

なお、この内容は水産宮崎No.804に掲載されたものです。

はじめに

No.804_図1

図1  刈取り前の海ぶどう

  海ぶどうとは、プチプチとした食感が特徴的であり、沖縄県でなじみのある海藻です。また、令和5年度の全国陸上養殖の藻類の合計出荷量のうち、海ぶどうが約8割を占めています。

  宮崎県では、令和6年度から新たな漁業を導入するため、海ぶどう陸上養殖の支援を始めました。海ぶどうは養殖期間が1ヶ月と短期間であり、単価も4,000~6,000円/kgと高値で取引されていることから、安定した収入を得ることができます。水産宮崎No.794にて、海ぶどうの概要と本県における市場規模調査について報告させていただきました。今回は、海ぶどう陸上養殖を新たな産業として、取り組む際の養殖モデルを試算しましたので報告します。

海ぶどう陸上養殖施設の構成及び生産シミュレーション

  宮崎県漁業協同組合連合会(以下「宮崎県漁連」という)の海ぶどう陸上養殖施設を参考に、個人経営体を想定した施設の構成及び生産シミュレーションについて検討しました。まず、養殖を行う前提条件として、海ぶどうの収穫量は植付けた母藻重量の約3倍に増量するとし、出荷量は形の良いものを選別するため、収穫量の6割としました(表1)。また、海水については、人工海水を使用し、栄養剤は市販にあるものを使用、母藻単価は1,500円/kgと設定しました。

 

No804_表1

表1 海ぶどう陸上養殖施設モデルの収支項目と前提条件

 

  次に、表2に海ぶどう陸上養殖施設モデルの初期投資について示しました。内部に水温調整のための空調を備えた40フィートの中古コンテナを利用し、内部に250 L水槽を12基、500 Lの養生槽4基のほか、流し台や脱水機などの設置を想定しました。設備項目のその他には電気や水道などの工事費用の概算も含まれており、初期投資の総額は616万円となりました。減価償却期間を10年間とした場合、1年間当たりの減価償却費は61.6万円となります。

No.804_表2

表2  海ぶどう陸上養殖施設モデルの初期投資

 

  上記の前提条件と施設構成から生産シミュレーションを行ったところ、1水槽当たりの植付量を6 kgと仮定した場合、生産量は18 kg、出荷量は11 kgとなりました(表3)。また、1生産当たりの水槽を3基使用した場合、出荷量は33 kgとなります。隔週植付けを行うことで、1ヶ月当たり、生産、出荷を4回ずつ行うことができるため、1ヶ月当たりの出荷量は130 kg、1年間当たりの出荷量は1558 kgとなりました(表3)。

No.804_表3

表3  海ぶどう陸上養殖の生産シミュレーション

  海ぶどうの市場価格が4,000~6,000円/kgのため、単価を4,500円/kgと設定し、シミュレーションすると、1月あたりの差し引き利益は28.7万円、償却前利益は33.9万円、1年間当たりの差し引き利益は344.6万円、償却前利益は406.2万円となりました(表4)。これは、「みやざきの賃金・労働時間・雇用の動き(令和6年度平均)」に記載されている1人平均現金給与総額(280,858円/月)に相当する金額であり、安定した収入を確保できているといえます。

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表4  1ヶ月当たり及び1年当たりの収支表

海ぶどう陸上養殖の産業としての評価と課題

No.804-図2

図2  養生中の海ぶどう

  現時点では、海ぶどう陸上養殖を行っているのは宮崎県漁連のみですが、今後、海ぶどう陸上養殖が新たな産業として県内に広がった場合の経済規模の目標を1,800万円としたとき、海ぶどうの単価を4,500円/kgで1経営当たり年間利益を400万円とすると、4~5経営体が必要となります。年間1個人経営体あたり1,500~1,600 kgほど出荷できるので、年間出荷合計量は約6,231 kgと概算しました。しかし、この出荷量は、前回調査で試算した県内需要2,184 kgを大きく上回ったことから、海ぶどう陸上養殖の普及にあわせ、消費拡大に向けた取組も必要になると考えています。

おわりに

  海ぶどうはほとんどが沖縄で生産されており、夏場にサラダの一部、もしくはそのまま食されるなど消費量が多い一方で、冬場は飼育適温にならないことや、消費量が落ち込むことが要因となり、取扱量が減少します。しかしながら、今回モデルとした養殖施設はコンテナ内で環境をコントロールできることから周年生産が可能であり、生産量において沖縄での養殖より有利になります。また、海ぶどうを日常的に周年利用できる食べ方を提案することで、今後の県内の消費拡大につなげられるのではないかと考えています。今回提示したモデルは、冬場にも生産ができるという強みがあるので、冬場の消費方法の提案やPRを関係者と協力して検討・実施していくことで、その強みを活かしたいと考えています。海ぶどう陸上養殖に興味を持たれた本県の漁業者は水産試験場までご連絡ください。

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