藻場保全活動に資するモニタリング技術の高度化-増養殖部-

更新日:2026年10月05日

はじめに

  藻場とは、沿岸の浅海域において海藻や海草が繁茂している場所や、それらの群落のことを指します。藻場は、構成する海藻の種類により、主にコンブ場やアラメ・カジメ場、アマモ場などに区分けされており、魚介類の産卵場や稚仔魚の保育場、餌料供給の場といった、「生物のゆりかご」と呼ばれる生態系にとって重要な機能を持っています。また、近年では二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する「ブルーカーボン」としての機能が注目されており、環境保全の面でも重要視されています。

  このように重要な役割を持った藻場ですが、1990年代、全国で大規模かつ急激な藻場の衰退が確認され、本県でも全体で66%減少したと言われています。原因としては、地球温暖化による海水温の上昇により、生育できる海藻種が減少したことによる藻場の消失や、海藻を食べるウニ類や植食性魚類(アイゴ、イスズミ、ブダイ等)が冬季においても活発に摂餌を行うようになった結果、藻場の回復が追いつかなくなってきていることが挙げられます。このような状況を受け、各浜の漁業者がそれぞれ藻場保全活動組織を立ち上げ、漁業者が主体となって藻場の保全・回復に向けた取組を実施してきました。取組の内容は、海藻を食べるウニ類や植食性魚類(アイゴ、イスズミ、ブダイ等)の密度管理がメインとなります。特に、ウニ類の密度管理においては、県の指標(1 平方メートル当たりのウニ類の目安密度)に基づき、各活動組織が取り組んだ結果、一部の藻場では再生の傾向がみられるなど、成功例もできました。

  これらの取り組みの効果を検証し、効果的かつ効率的なものにするには、様々な施策の前後の状態を把握するモニタリング調査が重要となります。今回は、本試験場が行っているモニタリング調査の内容と、ドローンを活用したモニタリング調査の高度化について紹介します。

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水産試験場の藻場モニタリング調査

  水産試験場では、県が設置した藻場礁や、県内の主要な藻場について、年1回以上のモニタリング調査を行っています。藻場の構成種や藻場の面積、藻場の被度を測定しています。今回は、空中ドローンを使用した藻場面積の測定と、水中ドローンを使用した藻場構成種の特定、被度測定について紹介します。

空中ドローンによる藻場面積測定

  従来の藻場面積調査は、潜水して藻場の縁辺を泳ぎながら位置情報を記録し、面積を測定していました。課題としては、見えている範囲の外にある小さな藻場を見落としてしまう可能性や藻場の内部に空白地帯があっても把握ができないこと、調査に時間がかかるため、長時間の潜水が必要なことがありました。これらの課題解決のため、ドローンに着目しました。

  ドローンを使用して上空から海域を撮影し、その写真を結合して海域のオルソ画像(航空写真の合成時にできるゆがみを補正した画像)を作成、海藻が生えている部分を測定することで、藻場面積の測定が可能となりました。

  これにより、従来の調査では見落としの可能性があった小型藻場や藻場内部の空白地帯を把握できたほか、調査場所によりますが、潜水では2時間ほどかかっていた調査時間を約15分に短縮できました。

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図4 空中ドローンによる藻場面積調査の高度化

 

水中ドローンによる藻場の構成種の特定及び被度の測定

  藻場の構成種の特定及び被度の調査については、従来専門のダイバーとともに潜水での調査を行ってきました。課題としては、面積調査と同じく長時間の潜水調査が必要なことや、特に被度については目視による分析で行われるため調査する人によって値が変わってしまう恐れがありました。

  そこで、水中ドローンを使用して、藻場の構成種の特定と被度の測定を試みました。水中ドローンを使用して葉や茎、気泡、付着器の形態を観察することで、藻場の構成種を特定することができました(図5~7)。  また、水中ドローンで撮影した海底の画像を分析することで、被度の測定を行うことができました。分析の際は、ImageJ(画像分析ソフト)を用いた画像分析を行うことで分析の精度を向上させることができました。これにより、調査時間を大幅に短縮できたほか、複数回繰り返し分析を行うことで被度を高い精度で測定することができました。

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今後の展望

  これらの成果により、潜水を行わずに藻場調査を行うことが可能となりました。近年注目されているブルーカーボンクレジットの活用を目指し、水中ドローンでの被度調査と空中ドローンによる藻場面積調査を組み合わせた、藻場全体の面積・被度分析を行うことを目的に、継続調査やQSIS(画像測定等解析ソフト)などを用いた画像分析に取り組みたいと考えています。

  今後も、藻場の維持再生やそれに連なる活動の支援のため、研究開発に取り組んでいきます。

 

 

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藻場保全活動に資するモニタリング技術の高度化(PDFファイル:991.6KB)

なお、この内容は水産宮崎No.805に掲載されたものです。

 

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