活魚の電気刺激による活け締め方法の効果検証【水産試験場・経営流通部】

更新日:2026年10月05日

はじめに

  水産物の付加価値向上の取組として、魚を高鮮度で保存する技術の一つに活け締めがあります。活け締めの方法は様々ですが、最近では脊椎神経にワイヤー等を通し、神経破壊する方法も主流になってきました。しかしながら、技術が必要かつ作業が繁雑な方法でもあり、その課題解決として今回は、県内企業が開発中の電気刺激による魚の活け締め器具の効果を検証したので報告します。本器具は、脳に専用の電極を突き刺し、電気を流すことにより、脳破壊と脊椎神経破壊を同時に行うことを目的としており、従来の一般的な活け締め方法と比べて、作業が簡単であるという利点を持ちます。

  しかしながら、本器具による活け締めの科学的効果は未検証であることから、本器具を含む複数の締め方による鮮度への影響を調べました。

活け締め方法とサンプリング

  供試魚には魚体サイズをそろえるため、県内産の養殖マダイを用いました。締めの方法は、氷締め、脳天締め、神経締め、電気締めの4区を設定し、それぞれの区にマダイを3尾ずつ用いました。氷締めは海水氷を入れた発泡スチロール箱に魚体を入れて致死させる手法、脳天締めは手かぎで脳を破壊し即殺する手法、神経締めは専用のワイヤーを脊髄神経に通して即殺する手法で実施し、電気締めは専用器具を用いて、電極の先端を脳に突き刺し、脳破壊をすると同時に、50 Vの電気を流し脊椎神経を破壊し致死させる手法を実施しました。

  締め作業後、鮮度指標となるpH、K値分析に必要な魚肉を採取しました。魚体は4℃で保管し、採取開始時を作業後0時間とし、3時間後、24時間後、3日後、7日後に、同様の方法で採取し、分析を行いました。

  ドリップ率分析用の採取は、締め作業後7日後に採取し重量測定、急速冷凍した魚肉を、産業用ワイパーを入れたチャック付き保存袋に入れて4℃で24時間緩慢解凍し、切り身重量の減少値を算出し、ドリップ量としました。さらに、減少量を冷凍前の切り身重量で除することによりドリップ率を算出しました。

鮮度指標の結果と考察

pH

  pHとは低いほど酸性、高いほどアルカリ性を示し、魚が激しく暴れることや、死後も反射によって筋肉が運動することで、乳酸という物質が蓄積し、魚肉内のpHが酸性になることが知られており、流通時の鮮度評価に影響します。測定結果について、締め作業後0時間は、脳天締めが最も高いpH7.057で、続いて、神経締めでpH7.010、電気締めでpH6.816、氷締めが最も低いpH6.740でした(図1)。さらに、締め作業後3日後は、すべての試験区において試験期間内で最低値となり、順に、脳天締めでpH6.344、電気締めでpH6.268、神経締めでpH6.249、氷締めでpH6.063でした(図1)。つまり、pHは締め作業後3日後までに、全ての試験区において酸性側に移行する傾向を示しました(図1)。その後、7日後にかけて、全ての試験区においてpHは上昇傾向を示しました(図1)。これは、体内でタンパク質が分解されて発生した、揮発性塩基窒素によるものと考えられました。図1のグラフから、電気締めは、締め作業時の運動エネルギー消費量が多く、作業直後に乳酸が蓄積したと考えられましたが、その後は脊椎破壊によって反射による筋肉の収縮は起こらず、pHが緩やかに低下したと考えられました。これにより、電気締めは締め作業後3日目において、神経締めと同等の鮮度保持効果が得られる可能性が示されました。

 

806_図1

図1 締め作業後の魚肉pHの推移

 

K値

  K値は魚の鮮度を示す指標であり、割合(%)で表記され、値が低いほど高鮮度なことを表し、20%を下回ると生食に適するとされています。

  締め作業後0時間後のいずれの区でも1%を下回り極めて小さい値でしたが、0時間後から7日後にかけて、次第に上昇しました(図2)。締め作業後7日後には、K値は11.26%から13.98%を示し、全ての試験区で20%を下回り、締め作業後7日後でも生食が可能な鮮度であることがわかりました。また、各試験区間でK値に有意な差はみられず、電気締めは、氷締め、脳天締め、神経締めと同程度の鮮度保持能力がある可能性が示唆されました。

 

806_図2

図2  締め作業後のK値の推移

 

ドリップ率

  ドリップ率は、解凍後の魚肉より流れ出る水分量を表し、数値が高いほど品質の低下を示します。各締め作業後に魚肉を凍結し、7日後に解凍してドリップ率を計測したところ、氷締めが最も高く、切り身重量の2.48%がドリップとして流出しました(図3)。次に、神経締めで2.07%、脳天締めで1.96%、電気締めが最も低い1.93%でした。電気締め、脳天締め及び神経締めは同等のドリップ率であったことから、電気締めは、ドリップ流出を防ぐ活け締め方法であり、魚肉の水分、アミノ酸を含むエキス成分を保持し、パサつき防止や、味を濃く保つ効果が期待できる結果となりました。

 

806_図3

図3 締め作業7日後の解凍後ドリップ率

 

  以上の結果から、電気締めは、簡易な作業ながら、脳天締めや神経締めといった従来の活け締め方法と、同程度の鮮度保持効果を発揮し、これまでに比べ簡単で効果的な締め作業が実施できる可能性が示唆されました。

 

 

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活魚の電気刺激による活け締め方法の効果検証(PDFファイル:468.4KB)

なお、この内容は 水産宮崎No.806に掲載されたものです。

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