今年度から取り組む新規研究課題のご紹介
今年度から水産試験場で取り組む新規研究課題についてご紹介します。
電子ファイルは以下からダウンロードできます。
令和4年度の水産試験場の新規研究課題のご紹介(PDFファイル:767KB)
なお、この内容は水産宮崎No.752-753に掲載されたものです。
令和4年度の水産試験場の新規研究課題のご紹介
-研究企画-
水産試験場の調査研究の実施にあたりましては、日頃より皆様方のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。コロナ禍という波乱の中、令和3年度には、第6次宮崎県水産業・漁村振興長期計画・第八次宮崎県農業・農村振興長期計画がスタートし、これに合わせて宮崎県農畜水産試験研究推進構想も改められたところですが、この構想の中で、水産試験場では長期計画の4つの柱のうち、「人口減少社会に対応した生産環境の創出」、「成長をつかむ高収益化と流通改革」及び「水産資源の最適な利用管理と環境保全への対応」という3つの柱を支える技術開発を研究の基本体系として整理し、令和4年度は14の研究課題と17のモニタリングなどに取り組みます。これらの中から、令和4年度からスタートする新規研究課題6課題についてご紹介いたします。
(1)ICT等技術を活用した次世代型資源利用技術の開発(R4~8,資源部)
水産試験場では、海洋レーダーで観測した流速・波高をホームページ上で分かりやすい図として公開するなど、効率的な操業を可能とし、漁業者の収益性向上に貢献できるよう様々な取り組みを進めています。令和4年度からは、主要浮魚類の資源状況と日向灘への来遊条件を精査し、中長期漁況予測の精査向上を図るとともに、漁船から得られる様々な漁海況情報をICT等の先端技術を用いてリアルタイムに収集・解析し、新たに開発する海況予測モデルと組み合わせることによる漁場予測技術の開発に取り組むこととしています。
(2)アユの河川遡上量予測技術の開発(R4~6,資源部)
アユは、漁業や遊漁、増養殖用の種苗と、幅広く利用されていますが、近年、資源は低迷していると考えられていることから、資源状況をしっかり把握し状況に応じた利用管理を推進する必要があります。このため、これまでも資源量推定に係るさまざまな調査・研究を行ってきており、海面におけるアユ稚仔魚の分布や密度及び沿岸海水中のアユの環境DNA量と、河川におけるアユの資源量の間の関係性が明らかになりつつあるところです。令和4年度からは、これらを指標とした資源量推定技術の開発に取り組むこととしています。
(3)遺伝子を利用した育種技術のための基盤研究2(R4~8,増養殖部)
農畜産分野に限らず、水産分野でも遺伝子を利用した育種技術の研究が進められ、海外や国の研究機関においては、こういった技術を活用して、高成長または感染症抵抗性系統の作出技術が開発されはじめています。
本県においても、2018年から開始した前研究においてカワハギの全ゲノム情報を取得するなど、一定の成果が得られてきています。令和4年度からは、成熟までの期間が比較的短く全ゲノム情報が少ないカワハギをモデルとしてさらに研究を進め、遺伝育種技術の高度化を図っていくこととしています。
(4)アマダイ類における親魚養成技術等の開発(R4~8,増養殖部)
アカアマダイについては、これまでの取組によって種苗の量産技術が開発されたところですが、採卵・採精するための親魚を天然で採捕されたものに頼っている現状から、良質な受精卵が安定的に確保できないという問題があります。令和4年度からは、人工種苗を親魚とした採卵技術や精子の凍結保存技術の開発に取り組み、安定的な受精卵の確保につなげていくとともに、アカアマダイで培った技術をアマダイ類の中でもひときわ高級なシロアマダイへの応用にも取り組むこととしています。
(5)新規就業者の経営状況の早期安定化を目指した分析(R4~6,経営流通部)
これまで本県になかった小型底定置網漁業は、初期費用が抑えられ、労力もそれほどかからないことから、今後、本県沿岸漁業者が副業として営むことによって収益性の向上が図られる可能性があります。また、県では新規就業者対策の一つとして、令和2年度に熟練漁業者の漁獲情報等が取得できる「技術伝承アプリ」を開発したところです。令和4年度からは、今後の担い手確保対策の一助とすることを目的として、小型底定置網漁業の導入時および導入後の経営に関する知見を収集するとともに、県が開発したアプリの効果検証等に取り組むこととしています。
(6)水産バリューチェーンの最適化を支援する県産水産物の販売力向上技術開発(R4~6,経営流通部)
水産業の収益性向上には、水産物の販売促進や付加価値向上に係る取組が欠かせません。このことから、水産試験場においては、これまでも加工品開発や機能性成分分析、鮮度保持に係る様々な試験研究等を行ってきたところです。このような中、昨今のコロナ禍の影響もあって、中食・内食に対するニーズが高まっています。また、本格的な長寿社会の到来等により、抗疲労、認知症予防等に資する成分など、機能性成分を手軽に摂取したいというニーズも高まっています。これらのことから、令和4年度からは、中食・内食に対するニーズに応えるための水産物の常温加工品に係る品質改善に関する技術開発や、県産水産物の機能性成分データの更なる蓄積に取り組むこととしています。
以上が令和4年度から取り組む新規研究課題ですが、このほか、前年度以前からの継続課題にも取り組んでまいりますし、試験販売用の水産加工品の製造が可能な「水産物加工指導センター」、魚病の診断や養殖場の巡回指導、ワクチン講習会などの魚病対策指導を担う「魚病指導総合センター」を設置・運営し、水産業を支援するサービス業務も行っております。
水産試験場に求められる役割は、水産業に従事される皆様の疑問・要望を解決する技術開発や情報の提供と考えておりますので、ご質問やご相談などがございましたら、遠慮なくご連絡いただきますようお願いいたします。
この記事に関するお問い合わせ先
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更新日:2022年05月13日