日向灘の水温の長期変化傾向について
水産試験場では漁況海況を把握するため、1973年から日向灘の海洋調査を毎月実施しています。調査内容は、気温、波浪等の海上気象観測、水温、塩分、流向等の海洋物理観測、動物プランクトン採取等の生物観測など多岐にわたります。
今回は、調査で観測した海面、50m、100mの水温データを用いて、およそ50年間にわたる日向灘の水温の長期変化傾向を解析しましたので、ご紹介します。
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日向灘の水温の長期変化傾向について(PDFファイル:535.6KB)
なお、この内容は水産宮崎No.755に掲載されたものです。
日向灘の水温の長期変化傾向について
-資源部-
はじめに
水産試験場では漁況海況を把握するため、1973年から日向灘の海洋調査を毎月実施しています。調査内容は、気温、波浪等の海上気象観測、水温、塩分、流向等の海洋物理観測、動物プランクトン採取等の生物観測など多岐にわたります。今回は、調査で観測した海面、50m、100mの水温データを用いて、およそ50年間にわたる日向灘の水温の長期変化傾向を解析しましたので、ご紹介します。
年平均水温の変化傾向
日向灘における2021年までのおよそ50年間にわたる海水温の上昇率は海面で+1.16±0.41℃、50mで+0.85±0.35℃、100mで+0.50±0.40℃と海面に近いほど大きく上昇していました(図1、表1)。また、各水深とも2000年頃からは上昇しておらず、横ばいで推移しているのが特徴的です。この傾向は世界の年平均気温においても同様で、「停滞」を意味する英語からhiatus(ハイエイタス)と呼ばれ、盛んに研究が行われています。
図1 日向灘水温の平年偏差の推移
棒グラフは各年の値,点線は5年移動平均値,実線は一次回帰直線を示す。
季節別平均水温の長期変化傾向
海面の平均水温平年偏差を季節別にみると、秋季と冬季の上昇が大きく、特に秋季は50年あたり+1.23±0.68℃と最も上昇していることが分かります(図2、表1)。ただし、秋季の移動平均値は,2005~2007年頃を極大とし,それ以降は下降傾向になっています(図3)。
図2 日向灘の季節別の海面水温の平年偏差の推移
冬:1~3月、春:4~6月、夏:7~9月、秋:10~12月を表す。
棒グラフは各年の値点線は5年移動平均値、実線は一次回帰直線を示す。
平年値は1991年~2020年の30年平均値
図3 日向灘海面水温の秋季の平年偏差の推移
棒グラフは各年の値,点線は3年移動平均値,実線は一次回帰直線を示す。
表1 平均水温平年偏差の長期変化傾向(℃/50年)
一次回帰分析により求めた1973年から2021年までの平均水温平年偏差の変化±95%信頼区間及び括弧内にM-Kテストの両側検定による確率値を示した。また、危険率5%で有意でないものをN・Sと示した。
おわりに
本研究で得られた日向灘の水温の変化傾向の知見は、過去に起きた日向灘の海洋生態系の変化の主要因を考察するうえで重要です。水産試験場では引き続き水温の変化をモニタリングするとともに、海洋観測で得られる様々なデータ等も用いて研究することにより、宮崎県の水産業振興に役立てたいと考えています。
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更新日:2022年07月06日